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ライントレーサー・AGV・LiDARを徹底比較|搬送ロボットの仕組み入門

  • 2 日前
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更新日:1 日前

工場や倉庫で使われる無人搬送車には、AGVやAMRといった種類がありますが、「何が違うの?」と聞かれることも少なくありません。今回は、搬送ロボットの“位置検出方法”に注目し、代表的な3方式、ライントレーサー方式、AGV(磁気誘導)方式、LiDAR方式の違いを分かりやすく解説します。


① ライントレーサー方式(床の線を追いかける)


最もシンプルなのが、床に貼ったテープや塗装ラインをセンサーで読み取り、その線に沿って走行する方式です。いわば「決められたレールの上を走るガイド走行」にあたります


筆者が以前、小学生・中学生向けのロボットを使ったプログラミングの教室に携わったことがあり、その時の記事をもとに紹介させていただきます。


レールを認識するためのセンサーとして、赤外線センサーを使います。センサーは反射光の強弱を数値で表示できるようになっています。当時は白い紙の上の黒いラインをトレースするという動かし方のため、白い紙と黒い線の反射光の値を測定し、平均値を計算します。この平均値をしきい値として使います。


赤外線センサーの使い方
赤外線センサーの使い方

2つの赤外線センサーは、黒い線をまたぐように配置されています。左右のセンサーがそれぞれ閾値を超えたら位置を修正する方向に動くようにプログラミングされており、これによってガイドに沿って走行します。


ライントレーサーの動き方
ライントレーサーの動き方

このライントレーサーですが、残念ながら照明条件や床の汚れの影響を受けやすいという課題がありました。そこで技術が次項のAGVに移り変わっていきます。


② AGV(磁気テープ・誘導線方式)


AGV(Automated Guided Vehicle)は、床下に埋設した誘導線や磁気テープを検知して走行します。ライントレーサーよりも工業用途向けに発展した方式です。


ここで少し歴史的な背景を紹介します。
実は、磁気テープ方式が普及する前に登場していたのがワイヤー埋設型の電磁誘導方式です。床下にワイヤーを埋め込み、そこに交流電流を流すことで磁界を発生させます。車両側はコイルでその磁界を検知し、ガイドに沿って走行します。現在でもゴルフ場のカートなどで利用されている、実績のある方式です。
その後、施工性を大きく改善したのが磁気テープ方式です。床への埋設工事が不要となり、テープを貼るだけでルート構築が可能になりました。この手軽さと安定性が、日本の製造業中心の現場環境と相性が良く、国内で独自の市場を形成していきます。
一方、海外ではレイアウト変更の柔軟性や拡張性がより重視されました。その結果、床工事を前提としない自律走行型(AMR)へと早期に技術がシフトしていきます。
技術の進化は、文化の違いを映す鏡とも言えますね。

さて磁気テープによる誘導方式ですが、前述のライントレーサーと同様、レールを認識する必要があります。赤外線センサーの代わりに、磁気センサーが磁気テープの磁力強度を測定しながらガイドに沿って走行します。なお磁気センサーは磁束の向きも検出することができるので、レールと磁気センサーの距離が一定レベルで離れてしまってもレールの中心を認識することができます。


磁気センサーと磁束の関係
磁気センサーと磁束の関係

③ LiDAR方式(AMRで主流)


海外で先に進み、近年日本で増えているのが自立走行、LiDAR(レーザー測距センサー)を用いる方式です。LiDARは周囲の壁や柱、設備の形状をレーザーでスキャンし、地図と照合して「自分がどこにいるか」を判断します。これを用いるのがAMR(Autonomous Mobile Robot)です。


少し解説が難しいのでこのように考えると分かりやすいと思います。机の上に大きな工場の建築図面が置いてあると考えてください。そして手元に壁や柱だけが描かれた透明の下敷きを持っています。この下敷きはLiDARが今見ている景色です。この下敷きと建築図面がぴったり合うところが今あなたのいる場所、ということになります。


LiDARによる自己位置推定
LiDARによる自己位置推定

ただいきなりぴったりと合うところを見つけることは難しいです。だから何らかのヒントが欲しくなります。ある建物の中で、建築図面だけを持って目隠しされたまま少し移動させられた様子を想像してください。その場所は初めに居た所からそんなに遠くではなさそうです。目を開けてよいと言われたとき、あなたは自分の位置をどう予測しますか。恐らく現在地と予想される建築図面の一部を選び、実際の景色と見比べて自分の位置を認識すると思います。


地図上で先に自己位置を予測
地図上で先に自己位置を予測

AMRも同じことを計算で行っています。逐次ベイズ推定の一種で、逐次モンテカルロ法と言われる次の状態を予測しながら追跡を行っていくアルゴリズムを使っています。その一つの手法としてパーティクルフィルタが使われます。移動先の候補をランダムに作り、LiDARの測定結果との一致度を尤度関数を用いて計算します。尤度関数とは統計学における逆問題の考え方で、未知のパラメータ下で観測されたデータの尤もらしさを表現するものです。通常は「この場所にいたらこう見えるはず」という順方向の計算をしますが、ここでは「こう見えている(観測)のだから、この場所にいる(パラメータ)確率が高い」と逆算しています。


ここまで読んでいただくと、AMRも決して万能ではなく、環境によっては「迷子」になる可能性があることに気づかれたのではないでしょうか。自己位置推定は確率計算に基づく高度な仕組みですが、だからこそ前提条件が崩れると性能に影響が出ます。現場で安定運用するためには、その特性を正しく理解しておくことが重要です。


次の機会で、AMRが迷子になりやすい環境の特徴や、実際の対策アプローチを具体的に解説します。また、現場条件によってどのようにAMRとAGVを使い分けるべきか、それぞれの強み・弱みも整理していきます。

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