工場でAMRが突然止まる? |「WiFiダマ停問題」とその対策
- 3 時間前
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食品工場や物流現場でAMR(自律走行搬送ロボット)を導入する際、多くの方がまず気にするのは「ルート」や「安全性」です。 しかし、実際の現場運用で見落とされがちな大きな課題があります。それが、WiFi通信の不安定さによる“ダマ停”問題です。
なぜ食品工場では通信が不安定になりやすいのか。
食品工場での事例を紹介します。食品工場では図のように、エレベーター、そして冷蔵庫や冷凍庫のように多くのドアがあります。それぞれが鉄製のため、閉まっているときは無線電波を遮断してしまいます。このような環境では、部屋をまたぐたびにWiFi電波が弱くなりやすく、場合によっては通信が切断されます。特に厄介なのが、単純に「切れる」ケースだけではありません。

本当に危険なのは“ゴースト接続”
実際の現場では、WiFiが完全に切断されるよりも、「つながっているように見えるが、実際には通信できない」という状態が発生することがあります。いわゆる“ゴースト接続”です。スマートフォンであれば少し待てば復帰することもありますが、AMRは違います。AMRは各動作タイミングで確実な通信が必要です 。つまり「WiFiアイコンが表示されている」だけでは不十分で、実際に安定してデータ通信できている必要があります。
通信不良が引き起こす「ダマ停」
WiFiが不安定になると、AMRは安全側に動作し、停止することがあります。しかし問題は、その停止が、「エラー表示もなく」、「異常通知も出ず」、「現場担当者も気づかない状態」で発生するケースです。これが、いわゆる「ダマ停」です。特に夜間や無人運転時では、「いつの間にか止まっていた」という事態になり、生産や搬送に大きな影響を与えます。
「ダマ停」の事例
実際当社が経験したダマ停の事例です。①~⑤はWiFiアクセスポイント(以降AP)の位置です。AMRが2F①②からエレベーターを経由して1F③④⑤に移動します。
エレベーターでWiFiが切れることは想定済みでしたが、実際ダマ停が起きたのは1Fの③でした。本来はエレベーターを出たら③のAPに接続してほしいのですが、何故か2Fの①を受信してしまい、ゴースト化によるタイムアウトエラーが発生してしまいました。

実際にドアごとの通信強度を測定
こういった経験があることから当社では、実際の工場においてWiFi強度測定を実施しています。測定を行うと、扉を通過するたびに接続強度が変化していることが分かると思います。WiFi強度が一番低下しているところでは、実際にダマ停が発生していることが確認されています。

当社が実施した対策「無線通信安定化ソリューション」
こうした課題に対し、当社では「無線通信安定化ソリューション」を導入しています。本ソリューションでは、AMRが常時複数のWiFi APの状態を監視しています。常に接続強度の強い(通信速度の速い)2か所のAPを選択して、ネットワーク上に設置した仮想化経路ゲートウェイを通じ、速度に応じてパケット送り出し量を調整することで、切れないWiFiネットワークを提供します。

まずは“測ってみる”ことが重要
もちろん、すべての工場で高度な通信対策が必要なわけではありません。見通しが良く、金属設備の少ない現場では、通常のWiFi構成でも安定運用できる場合があります。
一方で、「扉が多い」「金属設備が密集している」「エレベーターを跨ぐ」といった環境では、事前確認を強くおすすめします。簡易的には、スマートフォンアプリによるWiFi強度測定でも十分参考になります。
さらに精密に確認する場合には、実際に走行するAMRを用い、「SSIDごとの通信強度」「AP切替タイミング」「実通信品質」を測定する必要があります。当社では、これら両方の調査・測定に対応しています。
まとめ
AMR導入では、走行ルートや安全設計だけでなく、「通信品質」も重要なインフラの一部です。特に食品工場のような金属設備の多い環境では、WiFi品質によって安定運用が大きく左右されます。「つながっているように見える」だけでは不十分です。
実際に安定通信できているかを確認し、必要に応じて適切な通信設計を行うことが、AMR安定運用の重要なポイントになります。




